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【読書感想文】地雷グリコ

感想というより、感じたことを書き並べただけの散文です。
※このページの感想は、「地雷グリコ」を読んだ筆者個人の感想であり、作品の絶対的な良し悪しを決定するものではありません。

目次#

  1. あらすじ
  2. 感想

◆ あらすじ#

 ひとりの女子高生が、様々なゲームで切れ者たちと対峙する青春×頭脳戦作品。
 頭の回転が速く、とにかく勝負事に強い射守矢真兎(いもりやまと)は、平穏な生活を望んでいた。しかし、来る文化祭で屋上にカレー店を出店するために、真兎は学級代表として《愚煙試合》に駆り出されてしまう。彼女の高校では例年、屋上を希望する団体はゲームでその使用権を争うことになっているのだった。
 勝ち進んだ決勝戦。友人の鉱田(こうだ)が見守るなか、真兎は、《愚煙試合》 では負け知らずの生徒会役員・椚迅人(くぬぎはやと)と《地雷グリコ》で勝負する。求められるのは常軌を逸した推理力。勝てると思った時点で負けの頭脳戦の火ぶたが切られる。
《愚煙試合》以降も、切れ者たちとの風変わりな 〝ゲーム〟に、真兎は何度も挑戦することとなる。

WARNING

読書感想文の性質上、以降の感想の随所にネタバレを含みます。

◆ 感想#

 ずごく刺さりました。めちゃくちゃ面白かったです。アニメ化したらすごくおもしろそうだと感じました。
『地雷グリコ』は五つのゲームからなる連作短編形式の作品なのですが、どのゲームも手に汗握る怒涛のごとき展開の連続で、最後のどんでん返しがすごかったです。稀代の天才でもこの状態からの勝利は無理だろう――そんな予想を、ことごとく裏切られました。運任せに思えるようなゲームでも、実はゴリゴリの心理・情報戦で、緻密な策略と心理の読み合いが必要になります。対戦相手はどれもかなりの切れ者なので、それだけでは不十分。いかにしてルールの穴を見つけるか――バレないイカサマを仕掛けるか――が必要になってくるのです。グリコをもとにした《地雷グリコ》、坊主めくりと神経衰弱を組み合わせた《坊主衰弱》、じゃんけんに独自手を加えた《自由律じゃんけん》、だるまさんがころんだに着想を得た《だるまさんがかぞえた》、ポーカーからできるだけ運の要素を排除した《フォールームポーカー》。各ゲームのルールは誰もが知っている既存のゲームに則って、そこにいくらかの特殊な追加ルールを加えたものなので、瞬時に理解することができました。どのゲームでも、シンプルなルールのもとで切れ者同士が高度な心理戦を繰り広げるのですが、真兎やその相手の思考を、彼女たち自身や周囲の頭がイイ人たちが丁寧に説明してくれるので、置いて行かれることもほとんどありませんでした。最終章の《フォールームポーカー》は、作中のゲームの考案者が言うように複雑で難しかったですが、随所に図解があり、また様々なキャラクターの視点でゲーム展開の説明がなされるため、両プレイヤーの(一見)飛躍的な思考は僕にも理解できました。ついさきほど述べたように、プレイヤー(特に真兎)が一見すると首を傾げたくなるような不合理に思える選択をすることがあるのですが、その理由が明かされたときの爽快感たるや。ああ、そういうことだったのね! 膝の皿が割れるくらいに、何度も膝を打ちまくりました。
 本作の主人公たちは高校生ということで、手に汗握る頭脳戦としてだけではなく、主人公たちの成長譚・青春ものとしても楽しむことができました。微かに百合要素もあって、後半は頬が緩みまくりです。ふたりの手の繋ぎ方がすっごく好きです。常に気だるげで掴みどころがないように思えていた真兎の真意が明らかになったときは悶絶しました。真兎がただのゲーム狂ではなく、きちんと彼女の戦う理由や人生観が提示されたのがとてもよかったです。(鉱田ちゃんの下の名前が明かされていないのは、何かの伏線なのでしょうか……? 少し気になります)
 本作を読み終えて改めて表紙を見ると、各ゲームの要素が散りばめられていて楽しいです。頭脳戦モノは面白いとは思えどうまくルールを把握しきれていないと楽しめない印象があって、この『地雷グリコ』もしばらく敬遠していたのですが、どうしてもっと早く読まなかったのだろうと後悔するくらいに刺さりました。どのゲームも、ルールがシンプルで理解しやすい点が大きかったです。
 こんなに高度な心理戦を繰り広げられる自信はないけれど、どのゲームも実際にやってみたくなりました!